

Mucosal Immunol. 2018 May;11(3):871-880. doi: 10.1038/mi.2017.104.
多くの組織常在性マクロファージと異なり、大腸マクロファージは血流から供給される単球から分化することによって維持されています。一方、腸管上皮バリアーが何らかの原因によって破壊されると、腸内常在菌に対して激しい炎症を起こすことによって炎症性腸疾患(IBD)が発症します。その際、マクロファージは腸炎惹起分子TNF-αおよびiNOSを発現するようになりますが、この腸炎惹起形質の獲得機構は不明でした。
我々は、まずTNF-α/iNOSを発現する細胞集団の詳細を検討しました。その結果、それら腸炎惹起形質を持つ集団は、炎症性単球(炎症性マクロファージの前段階の細胞)及び炎症性マクロファージに限局していました。次に、これら腸炎惹起性単球・マクロファージの誘導機構を検討したところ、IFN-γ受容体を欠損するマウスやIFN-γ受容体からのシグナル伝達に重要なSTAT1を欠損するマウスで、炎症性マクロファージの誘導が明らかに減少しており、IFN-γ受容体→STAT1経路が腸炎惹起性マクロファージの誘導に重要なことが明らかになりました。実際に、STAT1を欠損するマウスでは、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性腸炎(ヒト潰瘍性大腸炎モデル)の程度が、コントロールマウスに比較して明らかに軽減していました。最後に、IFN-γ受容体→STAT1経路が如何にマクロファージのTNF-α/iNOS発現を誘導するのかをChipアッセイにより検討したところ、IFN-γ受容体→STAT1経路依存性にTnf, iNos遺伝子プロモーター領域のヒストンアセチル化が亢進していました。これらの知見から、IFN-γがマクロファージの腸炎惹起形質の獲得に重要な役割を担うことが明らかになりました(図1)。

これまで、定常状態及び炎症状態における大腸マクロファージの起源はよくわかっていましたが、炎症時、腸炎惹起性マクロファージがどのように教育・誘導されるかは不明でした。研究グループは、IFN-γがマクロファージのTNF-α/iNOS発現をエピジェネティックに調節し、腸炎惹起性マクロファージに変化させていることを初めて明らかにしました。本研究成果は、腸炎惹起性マクロファージの誘導に必須のメカニズム、さらにIBDや大腸がん治療のための新たな薬剤標的を示唆するものです。