研究内容Research

 Int Immunol. 2021 Nov 25;33(12):815-819. doi: 10.1093/intimm/dxab031.

【ポイント】

  • 樹状細胞(DC)および単球は、脊椎動物に広く保存されている免疫細胞であり、造血幹細胞から中間前駆細胞を経由して生じる。
  • DCまたは単球にのみ分化する前駆細胞が、ヒトおよびマウスの両方で最近同定され、その結果、それらの細胞の分化経路が明らかになった。
  • 解析技術の進歩により、前駆細胞集団レベルから個々の前駆細胞レベルに至るDCおよび単球の分化過程に関する理解がさらに深まった。
  • DC 分化決定前駆細胞、共通 DC 前駆細胞(CDP)、および前駆型従来型 DC(pre-cDC)は単球に分化しないため、DC は単球とは異なる系統である。ただし、単球は到達した組織で活性化すると、DC の機能を獲得することができる。

【Points】

  • Dendritic cells (DCs) and monocytes are immune cells widely conserved among vertebrates, arising from hematopoietic stem cells via intermediate progenitor cells.
  • Precursor cells that differentiate exclusively into DCs or monocytes were identified in both humans and mice, thereby elucidating their differentiation pathways.
  • Advances in analytical techniques have further deepened our understanding of the differentiation processes of DCs and monocytes, from precursor cell populations to individual precursor cells.
  • Since DC-committed progenitor cells, common DC progenitor (CDP) cells, and pre-conventional DC (pre-cDC) cells do not differentiate into monocytes, DCs belong to a lineage distinct from that of monocytes. However, monocytes can acquire DC functions upon activation in the tissues they reach.

【背景】

樹状細胞(DC)は、抗原提示細胞(APC)の代表的なタイプである。抗原を捕捉した後、DCは成熟する過程で流出リンパ管を介して近くの局所リンパ節へ移動し、そこでナイーブT細胞に抗原を提示して、T細胞の活性化または寛容誘導を引き起こす。さらに、形質細胞様DC(pDC)は、TLR7およびTLR9(ヒトではTLR8も)を介して核酸を認識した後、I型IFNを迅速かつ大量に産生することから、発見当初はインターフェロン(IFN)産生細胞(IPC)と呼ばれていた。IPC は形質細胞様形態を呈し、活性化すると APC 機能を発揮することが報告されたため、その後にDC の一種として分類され、pDC と名付けられました。一方、単球は、豆形または腎臓形の核を持つ食細胞性の単核球です。単球は血液中に存在し、定常状態では、さらには感染や炎症などの組織損傷によって組織常在マクロファージ(TRM)が失われた場合には、組織内に移動してTRMを補充する。

【総説の概要】

多能性造血幹前駆細胞(hematopoietic stem progenitor cell; HSPC)は、リンパ球や赤血球系統への分化ポテンシャルを失うことにより、特定のミエロイド細胞へ分化の方向性が決定した前駆細胞に分化する。マウスおよびヒトにおいて、DCあるいは単球へ分化の方向性が決定した前駆細胞が同定されている。

DCの発生・分化

1. マウスDC前駆細胞

 最初に報告されたのは、マウスのDC前駆細胞(common DC progenitor; CDP)である。CDPは、多くのcDCと比較的少数のpDCを生み出す性質を示したが、その後、優れたpDCの分化能を持つ別のCDPも同定された。これら2種類のCDPはM-CSF受容体(M-CSFR)の発現レベルが異なり、前者はM-CSFR+、後者はM-CSFR-であった。CDPより分化の進んだpre-cDCも同定された。CDP以外にも、個々の細胞をバーコードでタグ付けする方法を用いて、多能性前駆細胞(multipotent progenitor cell; MPP)の亜集団(lymphoid-primed MPP; LMPP)にDC前駆細胞が含まれていることも報告された(DC-primed progenitor; DPP)。LMPPは不均一な集団であり、LMPPの約半分はDPPであった。

 その後、共通リンパ系前駆細胞(common lymphoid progenitor; CLP)に、B細胞およびpDC前駆細胞が含まれていることが報告された(Ly6D+CLP)。Ly6D+CLP由来のpDCには、リンパ球関連遺伝子が発現しており、対照的に、CDP由来のpDCは、ミエロイド関連遺伝子が発現していた。定常状態の脾臓では、Ly6D+CLP由来のpDCが多くを占め(70-90%)、CDP由来のpDCは比較的少数であった(10-30%)。また、CDP由来のpDCだけがCpG-A刺激時に抗原提示機能を示し、ナイーブT細胞の活性化を誘導したという。Ly6D+CLP由来のpDCは活性化しても抗原提示機能を示さないことから、DCの定義を満たしているとは言えず、“pDC様細胞”あるいは“I型IFN産生自然リンパ球(innate lymphoid cell; ILC)”と呼ぶべきなのかもしれない。

2. ヒトDC前駆細胞

 臍帯血および骨髄のヒト顆粒球-単球前駆細胞(granulocyte-monocyte progenitor; GMP)からCDPが、臍帯血、骨髄、末梢血等からpre-cDCが同定されている。また、ヒトpDCも、in vitroでのインフルエンザウイルスの24時間感染またはCpG刺激によって、3つのサブタイプに分類される。優れたI型IFN産生能を有するが抗原提示機能が弱いpDC、I型IFN産生能は低いが優れた抗原提示機能を持つpDC、両方の機能を兼ね備えたpDCである。

3. 集団ベースの階層モデルから単一細胞レベルの運命決定モデルへ

 HSPCから特定の細胞系列のみに分化する前駆細胞に至る多くの前駆細胞集団の発見により、造血細胞分化に関する「階層的」描写が可能になった。この階層モデルは、各々の前駆細胞集団の分化能を前提として提案されたが、特定の集団を構成する個々の前駆細胞の分化能を反映していない(図1)。前述したように、LMPPの不均一性が証明されている。真の多分化能LMPPクローンは約5%のみであり、ほとんどのLMPPクローンは特定の細胞系列に分化の方向性が決定しており、約50%はDCに分化、残りは単球/DCまたはB細胞に分化した。同様に、共通ミエロイド系前駆細胞(common myeloid progenitor; CMP)が不均一な集団であることも報告されている。MDPは、DCまたは特定のミエロイド系細胞分化能を持つ異なる前駆細胞の集合体であるとの報告もある。また、CDPクローンの約16〜26%はすべてのDCサブセットを生成するが、残りのCDPクローンは特定のDCサブセットのみに分化する。同様に、ヒトにおいても各前駆細胞は偏った分化能を示すクローンから構成されていた。単球及び全てのDCサブセットを産生するMDP細胞はほとんどなく、DCサブセット全てを産生できるCDPクローンは稀である。

 これらの結果は、特定の前駆細胞集団は均一ではなく、個々の前駆細胞が独自の分化能を持つことを示唆している。これは部分的には理に叶う結果である。なぜなら、上流から特定の前駆細胞集団ゲートに入ったばかりの細胞は多能性細胞であり、A~Dすべての系統への分化能を持つが(図1、前駆細胞集団X、四角枠内最上段の細胞)、分化段階が進み当該前駆細胞集団ゲートから離れる直前の細胞はすでに特定の系統に運命決定されているからである(図1、前駆細胞集団X、四角枠内最下段の細胞)。ただし、集団ベースの階層モデルでは、多能性細胞を全く含まない集団が(図1、前駆細胞集団YまたはZ)、多能性細胞を含む正規の集団(図1、前駆細胞集団X)と同じ集団として定義されてしまう重大な欠点がある。

単球の発生・分化

1. マウス単球前駆細胞

 個体発生の過程において、胎児の単球は、卵黄嚢から胎児肝へ移動した赤血球・骨髄系前駆細胞(EMP)から生じる。出生後の造血幹細胞(HSC)由来の単球とは異なり、EMP由来の単球は高い増殖能を有しており、この特性は、それらの単球に由来するTRMにも受け継がれている。マウスでは、骨髄および脾臓において、単球への分化能に限定されたHSC由来の中間前駆細胞(共通単球前駆細胞:cMoPs)が同定されている。生体内において、移植されたcMoPsはLy6chi単球を生み出し、続いてLy6clo単球へと分化するため、古典的単球から非古典的単球への順次的な分化経路が支持される。Fate-mappingによっても、Ly6chi単球からLy6clo単球への順次分化が明らかになった。別の研究では、単球はMDPまたはGMPのいずれかに由来することが示された。骨髄(BM)内のLy6chi単球は、MDP由来の単球と、全Ly6chi単球の約12%を占めるGMP由来の「好中球様」単球という2つの集団から構成されており、これはMDPがGMPの下流の前駆細胞ではなく、GMPとMDPが独立して機能的に異なるLy6Chi単球を生成することを示唆している。事実、GMP特異的遺伝子であるMs4a3を用いたFate-mapping研究でも、GMPはMDPを経由することなく単球を生み出すことが示されている。

2. ヒト単球前駆細胞

 マウスcMoPの同定は、ヒトにおける対応する細胞の存在可能性を示唆していた。過去に報告されたヒトGMPは、顆粒球や単球に加え、DCやリンパ球にも分化する点から、不均一な集団である可能性があった。ヒトの単球およびマクロファージで高発現するCD64とCLEC12Aを用いて、私たちの研究グループは、当該GMPを4つのサブポピュレーションに分画した。コロニー形成アッセイ、細胞培養、および包括的な遺伝子発現解析の結果に基づき、CD64hiCLEC12Ahi細胞がマウスのcMoPに相当するヒトの細胞であり、CD64intCLEC12Ahi細胞が改訂されたGMP(rGMP)であると結論付けた。マウスの GMP と同様に、ヒトの rGMP は顆粒球や単球を産生するが、DC やリンパ球は産生せず、ex vivo で cMoP、前単球、単球へと順次分化した。

【今後の展望】

本稿では、DC分化に関する最近の知見を中心に紹介した。DCの分化は、DC前駆細胞の存在する微小環境と前駆細胞固有の要因の両方によって決定されるが、大部分の研究は、前駆細胞固有の分化能に関する解析に留まっている。DC前駆細胞が局在する微小環境(ニッチ、間質細胞、関連分子など)の特性評価は、個々の前駆細胞の運命を理解するために重要であり、今後の検討課題である。また、DCがその機能を発揮するのは感染や炎症等のストレス環境下であるが、同環境下におけるDCの分化研究はほとんど行われていない。一般的に、定常状態における前駆細胞の分化能は、ストレス環境下では目的に応じて変化することが考えられ、その結果、同じ前駆細胞から偏った血液細胞分化あるいは定常状態ではみられない新しい血液細胞系統への分化が誘導される可能性がある(図2)。さらに、DCを含む全ての血液細胞分化経路は、前駆細胞集団間の階層関係に基づいたモデル(集団ベースの階層モデル)が提唱されてきた。今後は、その進化形として、個々の細胞の分化能や分化のタイミングに基づくモデル(単一細胞ベースのコミットメントモデル)が主流になるであろう。