
Front Immunol. 2021 Feb 22;12:618081. doi: 10.3389/fimmu.2021.618081.
炎症反応は恒常性の維持に不可欠であるものの、不適切に誘発・持続されると、生命や健康にとって深刻なリスクとなり得る。COVID-19パンデミック以前、世界では死亡例の約19.7%が、感染を媒介とする炎症によって引き起こされる敗血症に関連していた。パンデミックにより、重症敗血症を併発したCOVID-19患者の死亡率は最大48%に達した。また、血液悪性腫瘍患者に対するキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法などの免疫療法では、サイトカイン放出症候群(CRS)がしばしば引き起こされ、患者の生命を脅かす。したがって、重度の全身性炎症を制御することは、今日においても重要な課題である。自然免疫は、獲得免疫を誘導することで宿主の防御に重要な役割を果たしていると同時に、自然免疫細胞によるサイトカインの産生は、組織損傷や多臓器の機能不全を引き起こし、生命を脅かすリスクとなり得る”双刃の剣”である。特に、炎症初期において、自然免疫系が、如何に宿主防御と組織損傷のバランスを調節しているのかは未解明な点が多い。本研究では、このバランス調節機構における単球の役割の解明を目的とした。
本研究では、マウスのLPS誘導性敗血症モデルにおける単球の挙動に着目した。全身性炎症の初期段階において、好中球は末梢へ正常に供給されていたにもかかわらず、単球の数は著しく減少していた。これは、骨髄の単球が直ちにアポトーシスによって死滅あるいは遊走機能不全に陥ったことが原因であった(図1)。重要なことに、単球の供給を阻害するメカニズムは、IFNgやTNFa等の炎症誘発性サイトカインに依存していた。これら単球調節機構と炎症の重症度との相関は、異なる太さの針を用いて炎症の軽重を調節可能な盲腸結紮穿刺モデルでも確認することができた。
最後に、当該単球調節機構の有無を、CAR-T細胞療法を受けたCRS患者の血液サンプルで検証した。その結果、軽度のCRS患者ではCAR-T細胞輸注前と比較して炎症のピークで末梢血中の単球数が増加するのに対し、重度のCRS患者では逆に減少することが分かった。
総合すると、単球は炎症の重症度を感知し、軽度の場合には炎症反応に積極的に参加するが、過度な炎症の場合には組織損傷を軽減し宿主の生存を担保するために、単球自身がアポトーシスあるいは機能不全に陥るという、単球による新たな炎症調節機構の存在が明らかになった(図1)。

制御不能な炎症を防ぐため、免疫系には適切なタイミングで適切に機能するさまざまな調節機構が備わっている。本研究では、過剰な炎症の初期段階において、単球のアポトーシスによる除去および機能不全の誘導による炎症制御機構が明らかになった。このメカニズムは獲得免疫の関与を必要としないため、獲得免疫系が発達する以前から存在していた原始的なシステムである可能性があり、重篤な炎症性疾患の治療標的候補としての単球の重要性を示唆している。