エッセイEssay

留学時のボスとの再会

私が内藤財団の助成金でスイスに留学したのは1992年。あれから23年、内藤財団への寄稿は4回目、何度となくご支援いただき今日まで研究を続けられた証である。この場をかりてお礼申し上げたい。留学時のボスである免疫学者Robson MacDonald (Rob) 博士の定年を1年後に控えた昨年秋、スイスローザンヌに彼を訪ねた。街並みや趣のある駅舎も当時のままで、留学時の記憶が鮮やかによみがえる。駅前のホテルに1泊して、翌日、Robが所長を務めるルードウィヒ癌研究所で講演を行った。驚いたことに、私の留学時にポスドクや大学院生だった旧知の面々が、この研究所で数多くPIになっており、私の講演に来てくれた。講演の冒頭、スペインのテニスプレーヤー、ナダル(私は彼の野性味溢れる表情が気に入っている)のpptスライドを出したところ、“おいToshi(私の名前)、ここはスイスだ!ナダルではなくフェデラーだろ(怒)!”研究とは無関係の鋭い指摘も嬉しい。講演後、旧知のPI数人と個別に話したが、改めて、研究者としてだけでなく人としての“揺るぎないidentity”を確認できた。夕食はRob & Lana夫人の自宅に招かれた。極めつけは2000年のレ・フォール・ド・ラトゥール、素晴らしい香りと味を楽しみながら四方山話に花を咲かせた。私にとっても、自身の“揺らぐidentity”を見つめ直す意義深い旅となった。

科学奨励金96号内藤財団時報より転載